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稲妻捕り(2)[『稲妻捕り』より]

加納 光於

1977

われわれは眼前に広がる世界を、形と色とどちらを手掛かりに認識しているであろうか。加納光於の場合は、‘形、次に色’の順番ではなく、「色彩、なによりもまず色彩が存在する」という。この一連の『稲妻捕り』を見ると、色彩はその器になっているはずの形の枠内に静かに停泊することなく、そこから自在に流動、変化している。そうした色の拡がりは、形として立ち現れるイメージと鋭く衝突し、そして最終的には圧倒的な力で画面を支配してゆく。作者はリトグラフという水と油の反発作用によって現れるこうした色彩劇を、素早く生け捕りにし、その一瞬の刻印を紙の上に写し取る。
銅版画家として出発した加納は、正規の美術教育を受けたことがなく、多くの技法を独学で自分のものにしてきた。したがってその発想も伝統的な領域を遙かに越え、それを表現へと置換していくために、次々と新たな技法、そして絵具といった素材さえも自ら研究、考案する。作家のたゆまぬ試行錯誤の歴史は、1977年に発表されたこの『稲妻捕り』から色彩へ向かって本格的に深まってゆく。(C.M.)